明石海峡大橋を望む、舞子公園の片隅に
数寄屋造近代和風住宅 旧木下家住宅があります。
旧木下家住宅は、又野良助(またの りょうすけ)氏の
私邸として1941年(昭和16年)、
第二次世界大戦の戦時中に完成しています。
戦後の1952年(昭和27年)に、木下吉左衛門氏の所有となり、
2000年(平成12年)に、故木下吉治郎氏のご遺族から
兵庫県に寄贈を受けています。
数寄屋造(すきやづくり)とは、茶室風の様式を取り入れた建物のことで
装飾を排し簡潔な造りで、わびさびを重んじた建築物のこと。
安土桃山時代から江戸時代にかけて完成した
建築様式の1つといわれ、数寄屋造の代表例として
京都の「桂離宮」や「修学院離宮」があげられます。
旧木下家住宅は、創建時の屋敷構えを
ほぼ完全に残す貴重な建物として、
2001年(平成13年)12月に、国の登録有形文化財に登録されました。
旧木下家住宅へは、JR線の北側
舞子公園内の松林を横切り北上した所にあります。
↑舞子公園の松林。
緑に覆われた地面と松の風景は、清浄さの中にも威勢を感じます。
↑JRの線路を越え舞子公園の松林を横目に北上すると
木々が生い茂る「旧木下家住宅」の入口にたどり着きます。
この階段を登り、ずずいーっと奥まで。
↑木に囲まれた小径が続きます。塀の向こうは、前庭になっています。
↑やや長めの小径を行くと、建物の玄関が見えてきます。
↑応接室です。大きな窓からは、緑豊かで涼やかな前庭が見えます。
部屋の角を壁ではなく、窓にすることで室内に
ゆったりとした開放感がうまれています。
↑主屋の広縁。広縁の右側に座敷があり前庭が見渡せるようになっています。
↑主屋の広縁を外から見ると、こんな感じ。
庇の下には、欄間のようなものが施されています。
さりげないおしゃれが、心憎いですね。
↑広縁の天井は、数寄屋造や純和風建築などで、しばしば見かける
「船底天井」と呼ばれる、勾配のついた天井になっています。
また、右側の欄間には聞香で使用される「源氏香」の
模様が施されています。
上部を見上げる人も少ないと思いますので
こういう古い建築物を見学するときは、
ぜひ、頭上にも目を配ってみてください。
↑広縁の突き当たりには、書院があります。
雪見障子から前庭が見え、品と落ち着きのある部屋になっています。
この窓から、ぜひ雪景色を眺めてみたい・・・。
↑書院の室内。
↑外から見た書院。雰囲気があってステキです♪
分かりますか?
庇を支える3本の柱、土台は石なんですよ!
↑座敷には床の間があり、そこに使われている木材の使い方や配置の仕方など
何気ない所にも、こだわりが見え隠れしていました。
↑床の間の天井も、凝っています。
確か「三色木目網代編み(?)」と係の方が言っていた気がします。
説明によるとこの技法、編める人がもういないんだそうです。
(間違ってたらすみません。。。)
私が拝観したときには、ボランティアのガイドさんがいて
使われている木材やその技術など各部屋の見所や
部屋の役割と諸処のいわれ、お庭などについて、
分かりやすく説明してくださいました。
ガイドさんの説明がなければ、気付くこともなく
見落としていたと思われる、工夫やこだわりを
各所に見ることができました。
おもてだった華やかさはないけれど
見えないところで、ちょっと粋なことをする
それが「数寄屋造」なんだと、ひしひしと実感しました。
↑中室から縁側への出入口。建具は夏仕様の葦を使った
「夏障子」になっています。風流でいいすね〜。
↑縁側から見た中庭。旧木下家住宅には、前庭と中庭の2つのお庭があります。
左に見える丸い窓は、茶室の待合いになっています。
↑待合いの丸い窓の外には、燈籠やつくばいが配置されています。
よ〜くご覧ください。何か気付きませんか?
そうです、手前にある柱は石の上に乗っています。
そんなことをよく考えたな〜、と思わず関心しました。
↑茶室です。本格的な造りになっていて、思わず正座してしまいました。
↑茶室のにじり口です。天井は、外部にある庇を室内に入れ
屋根裏を見せる「掛込天井」を用い、ありのままの姿を
大切にする技法を採用しています。
↑にじり口と障子を開けると中庭が見えます。
当時の人はこの茶室から見る中庭を、どのように眺めたのでしょうか。
数寄屋造近代和風住宅 旧木下家住宅は
敷地面積、約2209平米(約668坪)
総建築面積、約343平米(約103.7坪)
という立派な建物。
ですが、よくよく考えると
第二次世界大戦の戦火を逃れ、阪神淡路大震災での被害も少なく
ここまで無事に生き抜いてきた住宅ともいえます。
そう思うと考え深いものがあり、
施工主や建築にたずさわった職人さんの想いを感じながら
建物内をもう一度、見学し直しました。
造った人や住んでいた人は、
この建物が、こんなに大切にされ
国の登録有形文化財に登録されたことを
草葉の陰で自慢しているかもしれませんね。
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